臨床業務マネージャーにとって、最適な治験実施施設を見つける競争は、十数もの分断された情報源をまたぐ必死の検索です。競合他社が優秀な治験責任医師を確保している間、自チームはClinicalTrials.gov、社内の臨床試験管理システム(CTMS)、支払データベースなどからのデータを手作業でつなぎ合わせているのが現状です。もしこの数週間かかる高コストなプロセスが、たった一つの質問で済むとしたらどうでしょうか?
ITチームやアナリティクスチームが毎回新たなリクエストごとにデータを収集、加工、前処理するのではなく、エージェント型システムであれば、ビジネスユーザーが自然言語で直接データと対話し、必要なタイミングで実用的なインサイトを得ることができます。これは単なる効率化ではありません。領域の専門家が、より迅速かつ的確な意思決定を行い、治療をより早く患者に届ける力を得ることに他なりません。
Dataikuでは、臨床業務チームを支援するために、複数の情報源から動的に情報を検索、統合するマルチエージェントシステム「Clinical Trial Intelligence Agent」という強力なフレームワークを開発しました。
本ガイドでは、このシステムのアーキテクチャーを解説し、自社向けに構築する際の設計図を提供します。シンプルな会話型インターフェースを通じて、当社のフレームワークでは以下のことが可能です:
数千件の臨床試験を数秒で検索、比較する。
実績、多様性、その他のカスタム基準に基づいて治験実施施設の優先順位を付ける。
優秀な治験責任医師を特定し、その実績を評価する。
研究者の競争力レポートを生成し、アウトリーチ用メールの下書きを作成、ワークフローに直接統合する。
私たちのシステムは、DataikuのビジュアルWebアプリ「Agent Connect」上に構築されており、専門エージェントやツール群を統合するオーケストレーターエージェントで構成されています。このシステムは、Dataiku Solutions(Clinical Site Intelligence(英語)やSocial Determinants of Health(英語)など)へのアクセスに加え、ClinicalTrials.gov(英語)のような公共データベースにもライブAPIコールでクエリを実行できます。
目的:現在進行中の治験における競合状況を把握する。
ユーザーの質問:「当社の治験NCTxxxxxxxxを簡単に説明し、それに類似した治験を見つけてください。」
エージェントの動作:システムは2万件を超える治験プロトコルを含むナレッジバンクを対象にセマンティック検索を実行し、設計、対象集団、介入内容が類似する治験を特定します。その上で、競合環境について簡潔な要約を返します。

目的:有望な治験施設を見つけ、とくに医療資源の乏しい地域の施設を優先することで治験の多様性を向上させる。
ユーザーの質問:「これらの類似した治験における米国の治験施設を一覧化し、医療資源の乏しい地域を優先してください。」
エージェントの動作:エージェントは治験施設の過去の実績データを照会し、それをSocial Determinants of Healthソリューションの社会経済データと突き合わせ、チームが多様性に関する登録目標を達成するための優先順位付きリストを返します。

目的:優秀な治験責任医師の実績を確認し、アウトリーチの準備を行う。
ユーザーの質問:「NCTxxxxxxxxの治験における治験責任医師候補、Dr. John Snow(NPI: 1234567890)の競争力レポートを作成してください。」
エージェントの動作:エージェントは、CMS OpenPaymentデータベースを照会して、治験責任医師の研究助成金履歴や治験経験を取得します。その後、この情報をレポートとして統合し、レビュー可能性を評価します。

これらはどのように機能しているのでしょうか?このシステムは階層型アーキテクチャーを採用しており、上位のオーケストレーターが、専門的なプランナーエージェントのチームを管理します。

以下は図に示された構成要素です:
オーケストレーター:システム全体の「プロジェクトマネージャー」に相当します。ユーザーからのリクエストを受け取り、適切なエージェントにタスクを割り振り、それぞれの応答を統合して一貫した回答を生成します。
リードエージェント1:Study Intelligence Agent。すべてのデータ検索を担う高度なプランナーで、類似試験の検索、試験デザインの比較、施設の検索、治験責任医師の特定が可能です。
リードエージェント2:Competitiveness Report Agent。構造化データを受け取り、具体的で実用的なアウトプット(ここでは詳細なレポートとメールの下書き)を生成する専門的なプランナーです。
サブエージェントおよびツール:リードエージェントがタスクを委譲する各分野のスペシャリストです。
Study Queryサブエージェント:社内データセットに対して動的なクエリを生成します。
Study Semantic Searchサブエージェント:治験プロトコルのナレッジバンクを検索します。
API Callサブエージェント:外部の公開データベースにクエリを送信し、最新情報を取得します。
Clinical Trial Intelligence Agentは、Agent Connect(英語)内に構築されています。Agent Connectは、DataikuのビジュアルWebアプリであり、マルチエージェントシステムをノーコードで構築できる環境と、ユーザーがチャットボットのように対話できるインターフェースを提供します。Agent Connectでは、オーケストレーターとして機能する大規模言語モデル(LLM)が必要となり、複数のプロジェクトからエージェントを組み込むことが可能です。プロジェクトをまたいでエージェントをインポートできるこの機能は、再利用性を高めるだけでなく、生成AIアプリケーションの保守とガバナンスの促進にもつながります。インポートされた各エージェントには、オーケストレーターの判断を補助するためのメタデータを追加することも可能です。

このような堅牢なシステムを構築するには、体系的なアプローチが必要です。当社では、トップダウン設計とボトムアップ開発を組み合わせたプロセスを推奨しています。
ステップ1:フローを設計する(トップダウン型の計画)コードを一行も書く前に、エージェントシステム全体をフローチャートで可視化しましょう。これにより、各エージェントの役割範囲、必要なツール、相互関係を明確にすることができます。この計画は、関係者とのビジョンの共有や開発の進行をスムーズにするために非常に有効です。
ステップ2:基礎から構築する(ボトムアップ型のアプローチ)まずはツールの開発とテストから始めましょう。このボトムアップ方式により、各コンポーネントの機能を個別に検証でき、後からエージェントが動作しない場合にも原因の特定が容易になります。DataikuのAgent Toolsシステムでは、即時のテストと迅速な反復が可能なため、クエリ、アクション、API呼び出しツールをエージェントに接続する前に完成度を高めることができます。
DataikuのAgent Toolsシステムでは、Managed Tool(英語)、Inline Code Tool(英語)、Plugin Tool(英語)の作成と管理が可能です。一般的に、エージェントツールは「情報のクエリ取得」「アクションの実行」「他のLLMやエージェントの利用」という3つの機能カテゴリに分類できます。Dataikuが提供するManaged Toolは、データセットクエリ、セマンティック検索、Web検索、データセットへの書き込み、メッセージ送信、API呼び出し、LLM/エージェント呼び出しなど、これら3カテゴリの中核機能を幅広くカバーしています。Managed Toolは、ユーザーが自然言語によるプロンプト設計を行い、カスタマイズされた出力を得るためのフレームワークを提供します。

ツール開発ページでは即時テストが可能で、ツールの出力を確認したり、プロンプトの処理をワンクリックで追跡できます。このテスト機能により、迅速かつ反復的な開発プロセスが実現されます。
Dataikuの統合プラットフォームは、ノーコードの業務専門家から高度なAIエンジニアまで、あらゆるユーザーが高度なマルチエージェントシステムを構築できるように設計されています。
ビジュアルエージェント(英語):これは、AIエンジニアだけでなく臨床の業務専門家自身が、分析を支えるロジックを構築、改善できるため、開発を大幅に加速できるという点で非常に重要です。RACT(推論、アクション、コンテキスト、ツール)フレームワークを用いたこれらのエージェントは、シンプルなプロンプトで設定可能なインテリジェントプランナーとして機能します。
およびインラインツール:
AIエンジニアは、独自のデータソース、複雑な計算、独自ロジックなどに対応するために、Pythonで完全にカスタマイズされたエージェントやツールを構築できます。当社のClinical Trial Intelligence Agentでは、OpenPayment APIを動的にクエリするCode Agentを使用し、最新データへの直接アクセスを実現しています。
統合されたガバナンス付きフロー:エージェントを構築すると、そのエージェントとデータセット、ナレッジバンク、他のエージェントとの接続関係はすべてDataiku Flow上で可視化され、生成AIアプリケーション全体の系統とガバナンスが明確になります。

エージェントとそれが接続するデータセット、ナレッジバンク、他のエージェントとの関係は、すべてDataikuのフロー上で確認できます。
Dataikuのエージェントおよび生成AIモデルは、ビジュアルエージェントとコードエージェントの両方を作成、管理できる統合プラットフォームを提供します。機械学習モデルと同様のバージョン管理およびデプロイ機能が利用可能です。エージェントは別プロジェクトのAgent Connect Webアプリにデプロイ可能で、マルチエージェントシステムがさまざまなプロジェクトのインサイトにオンデマンドでアクセスできます。これにより、ユースケースごとに多様なデータソースを統合、事前計算する必要がなくなります。

DataikuのVisual Agentは、主要なモデルプロバイダーAPIおよびセルフホスト型モデルに対応するノーコードのエージェントフレームワークです。ユーザーは追加のプロンプトでエージェントの役割、ガイドライン、例を定義し、目標達成のためにエージェントツールを割り当てることができます。

Clinical Trial Intelligence Agentは、OpenPaymentの公開APIをクエリするためにコードエージェントを活用しています。カスタムツールにより、特定ニーズに応じたクエリの実行や結果の演算が可能で、その結果はリードエージェントに引き渡されます。この設計により、システムは最新のデータをその取得元に対して動的にクエリでき、ユーザーが自社インフラにデータをダウンロードして保持する必要がなくなります。
Dataikuは特定技術に依存しないAIプラットフォームとして、目的に最適なツールとの接続を可能にします。拡大し続けるプラグインライブラリを通じて、Google Vertex AI、Microsoft Azure、Snowflake Cortex、Databricksなどのモデルやツールを、Dataikuのガバナンス環境内で統合できます。