AIエージェントが安定して稼働し、すばやく応答し、あらゆる技術的なチェックをクリアしていても、もっとも重要な問いが残ったままになることがあります。それは「成果は出ているのか」という問いです。いまやCIOは、この問いに自らの責任で答える立場にあります。AIの取り組みのすべて、またはほとんどにおいて、成熟した高度なROI測定ができていると答えたCIOは、わずか4分の1(24%)にとどまります。
Dataikuの全6回シリーズの第1回では、Global AI Confessions Report: CIO Edition, 2026(The Harris Pollと共同で企業のCIO 685人を対象に実施した調査)をもとに、AIのROIを証明するプレッシャーが取締役会からCEO、そしてCIOへと伝わる流れを追いました。今回は、このレポートが示す4つの告白のうち最初の1つを取り上げます。それは、AIに対する説明責任が高まる一方で、企業全体でその価値を測定する能力が追いついていないということです。
本記事では、測定のギャップがどこにあるのか、コストの不確実性がすでにAI計画をどう変えつつあるのか、そしてエージェントが実際に機能しているかを見極める4つの問いについて考えます。

取締役会がROIを問うとき、CIOがすでに数字を用意していることが前提になっています。しかし、ほとんどのCIOは、その数字を出すための能力をまだ構築している段階です。ほとんどの取り組みで成熟したROI測定ができている4分の1を除くと、一部のユースケースに限っても成熟したROI測定ができているのは半数未満(41%)です。
注目すべきは2つ目の数字です。一部のユースケースは、通常もっとも測定しやすい領域です。対象は注目度の高い少数のプロジェクトで、担当者が明確で、成功指標も定義されています。そうした領域でさえ成熟した測定が例外的であるなら、本番稼働中のエージェント群全体を対象とした場合の課題は、はるかに大きくなります。
タイミングも、この問題の重要性を高めています。第1回で取り上げたとおり、AI予算は、CEOが定めた期限までに業績目標を達成できるかどうかと結びつくようになっています。測定は、ほかのすべてのAI投資を守るための能力になったのです。
リターンを把握するには、まず支出を把握する必要があります。しかし、AIへの支出はもはや1か所にまとまってはいません。モデル、インフラ、ツール、チーム、そして個々のエージェントのすべてが、企業全体のAI運用コストを生み出しています。
その支出を完全に可視化できている企業はまれです。AIエージェントや高度なAIワークロードのコストを、事業部門、チーム、ユースケースごとに配分したうえで、ほぼリアルタイムで完全に可視化できているCIOは、わずか21%です。
ここで鍵となるのは、コストの配分(アトリビューション)です。AIの総請求額からわかるのは、支出の総額だけです。配分によって、各項目をどのチーム、ユースケース、エージェントが生み出したのかがわかります。これがROIの算出を可能にします。
CIOがコストについて抱く主な懸念も、同じ点に行き着きます。
コストの可視性:38%が、チームやユースケースごとのコストが見えないことを挙げています
隠れたコスト:38%が、エージェントの乱立による隠れたコストの増加を挙げています
重複:37%が、重複したAIツールや冗長なAIツールを挙げています
エージェントの数が増えるほど、こうした懸念は大きくなります。エージェントが増えれば、コスト項目が増え、ツールの重複も増え、特定の成果に結びつけて追跡すべき支出も増えていきます。
この不確実性の影響は、財務レビューの範囲にとどまりません。39%のCIOが、AIエージェントやAIアプリケーションの実行に必要なトークンとコンピューティングのコストによって、AI戦略の計画、承認、実行の方法が大きく変わったと回答しています。さらに33%は、予測できないAIの利用状況によって計画が大きく混乱したと回答しています。
いまやコストの予測可能性は、どのプロジェクトを進めるか、どれだけ速くスケールさせるか、そしてAIの目標にどれだけ自信を持ってコミットできるかを左右しています。明確で、適切に配分されたコストデータがあれば、CIOはこうした判断のそれぞれにおいて、より強い立場に立てます。
AIの全体像を把握しても、答えが出るのは問いの半分だけです。CIOは、エージェントが意図したとおりに機能しているか、そしてその機能が本来の目的である成果につながっているかも把握する必要があります。
ここに最大のギャップがあります。72%のCIOが、すべてのAIエージェントについて、運用パフォーマンスとビジネス成果の両方を一貫して測定できていません。
例えば、顧客サービスのリクエストに対応するエージェントを考えてみましょう。稼働率は高く、応答時間は短く、エラー率も低い状態です。技術的なダッシュボード上では健全に見えます。しかし、CEOが気にかけている問いは別のところにあります。問題は解決されているのか。顧客満足度は上がっているのか。解決1件あたりのコストは下がっているのか。こうした問いに答えが出るまでは、健全なエージェントと価値あるエージェントは書類上では区別がつきません。
レポートでは、エージェントが実際に機能しているかを判断するためにCIOが答えるべき4つの問いを示しています。
コスト:何が、どこで、どれだけのコストで消費されているか
技術的パフォーマンス:エージェントは安定して稼働し、想定どおりに動作しているか
エージェントの有効性:エージェントは、作成された目的である業務をきちんと遂行しているか
ビジネスへの影響:エージェント型ワークフローは、本来改善すべきビジネス成果を改善しているか
最初の2つは、従来のIT監視にもっとも近いものです。証明の鍵を握るのは後の2つです。有効性は、エージェントが業務を果たしているかを示します。ビジネスへの影響は、その業務の遂行が、取締役会やCEOが追っている指標を動かしているかを示します。
第1回では、プレッシャーの連鎖をたどりました。この4つの問いは、エージェントのコストからリターンまでをつなぐ、エビデンスの連鎖を形づくります。価値が生まれるのは、本番稼働中のすべてのエージェントについてこれらの問いに一貫して答えたときです。そうすることで、CIOは結果を比較し、投資の優先順位を決め、得られた知見にもとづいて行動できます。
プレッシャーの連鎖のどの段階でも、証明が求められます。そして、その証明を示す手段が測定です。エージェントのコストと技術的パフォーマンスを企業の成果に結びつけられるCIOは、AI予算を守って成果を上げているエージェントのスケールを支え、取締役会が求める数字でROIの問いに答えることができます。
測定によって、CIOはエージェントが価値を生み出しているかどうかを把握できます。次回の記事では、さらに難しいケースを取り上げます。それは、設計どおりに動作しているにもかかわらず、ビジネス上の意図を満たせていないエージェントです。