Excel/Access中心のデータ活用に限界が生じる
首都圏一都三県を中心に、180店舗以上のディスカウント・スーパーマーケットを展開するオーケー。同社では、特売日を設けず、毎日が低価格の「Everyday Low Price(EDLP)」戦略を徹底しています。さらに近年では関西にも進出し、さらなる多店舗化を進めています。
そんな同社の“強さ”の源泉は、商品一品単位で実践してきたきめ細かなデータ管理にあります。EDLP戦略を実現するには、欠品を避けつつ過剰在庫を抑えるという相反する条件を両立させなければなりません。日々の販売、発注、在庫業務を支えるデータ活用の仕組みは、その両立を成り立たせる、収益に直結した経営基盤となっているのです。
しかし、この取り組みも岐路に差し掛かっていました。20年近く前から稼働していた基幹システムは、多店舗化とともに増大するデータを処理しきれず、定型帳票の出力だけで数時間から丸一日を要するケースも珍しくなかったのです。
現場ではExcelやAccessを用いたデータ集計や分析が広く行われており、特定の担当者のスキルや経験に依存しがちな状態にありました。とくに商品単位のきめ細やかな実績データを抽出、加工したり、計算式を更新したりする作業は非常に負荷が高く、手作業を中心とした既存の手法には限界が見え始めていました。
そもそも、各店舗がさまざまな実績データを確認できるのは翌日以降であり、当日の打ち手や発注判断に十分に生かすことができず、よりタイムリーで精度の高い予測を支える基盤整備の必要性が高まっていました。
現場での使いやすさと予測結果の説明性を重視しDataikuを選定
そこでオーケーが求めたのが、AIと高い親和性をもったデータ分析と活用のためのソリューションです。
そして、複数の製品を比較検討した結果、Dataikuの導入を決定。ノーコードで扱いやすく、データ加工から分析、モデル構築までの流れを可視化できることが決め手となりました。
データサイエンティストのような専門人材が限られる中、現場主導のデータ活用を進めていくため、これは他社製品にはない大きな利点になります。そのうえで重視したのが、AIが導き出すアウトプットの説明性です。
需要予測をはじめ、現場が結果を見て判断する業務では、精度だけでなく「なぜその数値になったのか」を説明できることが不可欠です。そうした処理フローや要因の見えやすさという点でDataikuは卓越しており、PoCで終わらせず実運用につなげるための基盤として適していたのです。
客数予測を起点に各店舗の発注判断を支援
同社が最初のテーマとして選んだのは、「店舗ごとの客数予測」です。商品単位の予測は変動要因が多く、実務で通用する精度を出す難易度が高いため、発注判断の土台となるこの予測から着手し、現場で使えるモデルづくりを進めることを目指しました。
そして、この取り組みを二人三脚で進めていくパートナーとして、Dataiku社より紹介されたSiNCEを選定。2024年11月にプロジェクトがスタートしました。
まずオーケーが着手したのが客数予測です。過去の来店客数の傾向に加え、気温や降水量などの天候情報、店舗規模、季節要因、周辺地域のイベント情報などを組み込み、店舗運営の実態に即したモデルを構築。さらに、過去データだけでは捉えきれない要因を補うため、各店舗の店長へのヒアリングなど現場知見も反映しながら、精度を高めていきました。
加えて重視したのが予測結果の説明機能です。まずは、SHAP値などを用いて、どの要因が予測結果に大きく影響したのかを可視化。Dataikuで構築した予測モデルとその要因分析の結果をBIツール上で確認できるようにし、店長やマーチャンダイザー(商品の企画や販売計画などを立案するスタッフ)が背景まで理解したうえで判断できる環境を整えました。
こうして実現したのが、【図1】に示すアーキテクチャーです。一部店舗でのトライアルとフィードバック収集を重ね、「現場で納得して使える仕組み」へとブラッシュアップを図りつつ、全180店舗への展開を進めています。
プロジェクトでは、データ収集から客数予測モデルの構築、全体のフロー設計まで、難易度の高い取り組みをSiNCEが伴走で支援。モデルの精度向上だけでなく、どう運用に乗せ、どう現場へ届けるかまで見据えて設計したことが、現場で継続的に使われる基盤の土台となっています。
予測精度向上と共にETL作業時間を大幅短縮
Dataiku導入の成果はすでに多方面で表れています。まず客数予測について、既存店を中心に高い精度が得られています。