Auckland Transport(AT)は、ニュージーランドで最も大規模で複雑な交通網の1つを運営し、ニュージーランド最大の都市オークランドで数百万人の顧客にサービスを提供しています。
顧客体験の向上、業務の合理化、従業員エンゲージメント向上のために、ATは、非効率を排除し、データ戦略を拡大する必要がありました。
ATは、分析とAIの中央集中型プラットフォームとしてDataikuを採用し、クラウドサービスとしてMicrosoft Azureを統合しました。
Azure OpenAIを使用して、非構造化テキストデータを拡充し、カスタム検索拡張生成(RAG)アプリケーションを開発して生成AI作業を強化しました。
Auckland TransportがDataikuを選んだ理由
ATがDataikuを選んだのは、Dataikuがユーザビリティー、即応性、シームレスな統合という3つの優先事項に対応していたからです。Dataikuの直感的なインターフェースにより、チームはこのプラットフォームを迅速に導入することができ、すぐに価値を実感できました。大規模なカスタマイズを必要とする他のソリューションとは異なり、Dataikuは既存のワークフローにシームレスに統合してすぐに使えるエクスペリエンスを提供しました。もう1つのメリットは、DataikuをATの既存のデータプラットフォーム(データベース管理ソフトウェアVerticaなど)にシームレスに統合できることでした。Dataikuでは、現行のインフラストラクチャー内で直接データを処理できるようにし、大規模なデータ移行を必要としなかったため、時間の節約になり、リソースを最適化できました。
ATは、Dataikuで次のメリットを獲得しました。
- MLOpsの合理化:モデルの更新と効率的管理を簡素化してワークフローを最適化
- 堅牢な展開と監視:効果的な展開と監視のプロセスでモデルの信頼性を強化
- ガバナンスと制御:データとモデルへの安全なアクセスを可能にするとともに、コンプライアンスを確保するガードレールを提供
- 透明性とコラボレーション:ワークフローとデータのプロセスをアクセスしやすく明確にして、チームのコラボレーションを改善
セマンティック検索による顧客体験の向上
ATのCRMシステムは、ソーシャルメディア、メール、オンラインフォーム、電話などのチャネルからの膨大な量の顧客フィードバックを処理します。以前は、レキシカル検索や完全一致テキスト検索に依存していたため、フィードバックの文脈、同義語、ニュアンスを解釈することが難しく、ケースを効率的に特定して優先順位を付けることが困難でした。
この問題を解決するために、ATのデータサイエンスチームは、テキストの前処理、クレンジング、固有表現抽出(NER)などの技術を使用するセマンティック検索ソリューションを開発しました。このソリューションをCRMシステムとシームレスに統合し、Power BIを活用することで、カスタマーサービスチームは行動に直結するインサイトに素早くアクセスできるようになりました。セマンティック検索により、顧客体験チームがケースを特定するのにかかる時間が30分からわずか数秒に短縮されました。この改善で精度が向上して、迅速な解決が可能になり、ATのサービスに対する顧客の満足度と信頼が高まりました。
データパイプライン自動化による業務の合理化
顧客フィードバック処理の改善に成功した後、ATは社内プロセスの最適化に取り組みました。Dataikuを導入する前は、パフォーマンス&アナリティクスチームはローカルのPythonスクリプトと共有CSVファイルを使用する手動のデータ変換に依存しており、エラーや不整合が頻繁に発生していました。
チームはDataikuでPythonとSQLのワークフローを1つの統合プラットフォームに統合して、データパイプライン全体を自動化しました。この変革により、生データをローカルボードとネットワークタイプごとに集計されたパフォーマンス指標に変換するプロセスが合理化され、一貫性と信頼性の高い出力を確保できました。
手作業をなくすことで、チームは毎月の作業時間を30時間節約でき、エラーのリスクも軽減しました。この効率化は50万ドルの生産性向上をもたらし、さらにユースケースの価値が35万ドル増加しました。どちらも、時間の節約と、より価値の高い活動や作業へのリソース再配分によって実現しました。さらに、データの一貫性向上と監視機能の強化によって、チームは問題を迅速にトラブルシューティングして、より正確なインサイトの提供に集中できるようになり、全体的な効率が向上しました。
調査分析による従業員エンゲージメント向上
ATは、Dataikuを活用して、従業員のフィードバックを分析する方法も変革しました。ケイパビリティ&カルチャーチームは、調査プロバイダーQualtricsを通じて四半期ごとに従業員チェックイン調査を実施しており、これには自由記述形式の回答も含まれています。しかし、このデータを手動で分析するには時間がかかり、深い分析ができないため、行動に直結するインサイトをタイムリーに引き出すことが困難でした。
データサイエンスチームは、Dataikuでセンチメント分析、感情検出、キーフレーズ抽出などの高度なNLP技術を活用して、分析プロセスを合理化しました。これらの機能により、従業員の感情のより深いパターンを検出して、ターゲットに合わせた行動につながる実用的なインサイトを得られるようになりました。
プロセスを自動化することで、このチームは分析に必要な時間を大幅に短縮できました。この効率化で従業員の懸念に迅速に対応できるようになり、エンゲージメントと満足度の向上につながりました。その結果、ATの従業員ネットプロモータースコア(eNPS)が上昇し、データドリブンの従業員重視アプローチの価値があらためて示されました。
今後の展望:AIと生成AIの拡大
ATにおけるAI活用は、ここで紹介した3つの中核的ユースケース以外にもはるかに大きく広がっており、現在Dataikuを活用する18件のプロジェクトが進行中です。とくに際立つ取り組みとしては、路上駐車場の空き状況を予測してドライバーの効率的計画を支援する駐車場予測モデルや、Webサイトからのフィードバックを分類し、行動につながるインサイトを提供してユーザーエクスペリエンスを向上させるNLP支援ツールなどがあります。もう1つの注目すべきユースケースでは、CRMデータを分析して、アクセシビリティーニーズのある顧客へのサービスを強化し、インクルーシブな交通システムを促進しています。
ATは、これらの成功を基にさらに業務とサービスを強化するため、生成AIの活用を積極的に探求しています。例えば、特定の公的情報法(OIA)要求への対応を合理化し、最終的に、より迅速で一貫性のある回答を提供するために、検索拡張生成(RAG)ソリューションを導入しました。この同じ技術を社内にも導入して従業員が人事ポリシーに素早くアクセスできるようにしたほか、カスタマーサービスの向上にも活用して、年間140万件を超える問い合わせをより正確かつ効率的に処理できるようにしました。
ATは、AIを活用したソリューションの多様なポートフォリオと、革新的技術の継続的な探求により、AIを活用して現在の課題に対処し、顧客体験を向上させ、ニュージーランドの交通の未来を推進するための標準を確立する体制を整えています。